『麒麟がくる』は、私にとって特別な大河ドラマだった
実のところ、『麒麟がくる』は本当に大好きな作品だ。
長谷川博己演じる明智光秀の、知性と高潔さ、そして何より“人を思う心”。
その静かで熱いまなざしに、自然と心を持っていかれた。
彼の周囲にいる人々が、その魅力に惹かれ、時に嫉妬し、時に愛する――
その人間模様が、実にリアルで、胸を締めつけられるようだった。
クライマックスでの信長(染谷将太)の表情。
光秀の裏切りを知った瞬間の、あの納得感と静かな怒り…光秀への愛憎?
風間俊介の家康には、芯の強さと不安定さが共存していて、すごく人間らしかった。
そして、帝の優雅でどこか狂気をはらんだ姿。
川口春奈が代役とは思えないほどのハマりっぷりで演じきった帰蝶。
毎週のオープニングテーマの重厚さが、ドラマへの没入感をさらに高めてくれた。
「歴代最高」と言っても、決して過言じゃない。
しかもこれが、あのコロナ禍のさなかに放送されていたなんて――
希望や理想を見失いそうな時期だったからこそ、より心に残ったのかもしれない。
信長は本当に怒っていたのだろうか。
あの表情には、怒りだけじゃなく、どこか「ようやく終われる」という諦めのような、安らぎさえ感じた。
長く続いた修羅の道。誰も信じられず、誰にも背中を預けられなかった彼が、
最後に選ばれたのが光秀だったこと――それ自体が、ある種の「理解」や「感謝」だったのかもしれない。
「眠りたい」という彼の心を、光秀は誰よりも感じ取っていたのではないだろうか。
そして岡村隆史について。
「芸人なのにすごい」なんて言うつもりは全くない。
俳優・岡村隆史として、ただただ素晴らしかった。
とくに光秀に正体がバレて、別れを告げるあのシーン――
心の奥底から絞り出すような哀しみと誇りが同居していて、胸が熱くなった。
静かだけど力強く、あの場にいる全員の感情を震わせるような演技だった。